tsukinosayakanari’s diary

コロナ禍で思ったこと

麻酔科医のしごと、モチベーション

去年から今年にかけて、なにかと麻酔科関連の不祥事が多い。

www.nikkei.com

 

mainichi.jp

 

www3.nhk.or.jp

 

ただでさえ世間から麻酔科医ってどうなの、と思われても仕方のない言い訳のできないニュースの数々。

そこにきて、今回の三重大学麻酔科の件。三重大ははたからみても、問題点が複雑で多重化しているため、どこか一点にメスがはいっても、一筋縄では解決はいかないのだろうなあ、と感じる。

 

麻酔はよく飛行機のフライトに例えられる。パイロットが麻酔科医、乗客が患者、航路が手術かな。操縦するには専門的な訓練が必要だけど、ちゃんとうまくいけば通常業務の一環で、死亡事故は万が一の確率でさえおこらない。もちろん事故に至らないまでのヒヤリハットは日常的にあるかもしれないけど、それに適切に対処でき、またそれを指導する・リカバリーできるシステムが構築されているのが一般。

麻酔の導入が飛行機の離陸、麻酔の維持が飛行中、麻酔の飛行機着陸に対応していて、離陸と着陸が一番事故が多く、神経をつかう。維持中は、安定してれば多少目をはなしても余裕だけれども、かといってトラブルがないわけではない。航路で言うと気圧のゆれなどかな。

一般的な全身麻酔のテクニックそのものは、2,3年でだいたい完了する。ただテクニックはマスターできても、他科・他職種とのコミュニケーション、患者(および家族)の治療する、といったゴールに向かうための組み立て、舵取り、リーダーシップといった面は、十年たってやっと一人前といったところで、それ以上たった自分でもまだまだこれからだなあと思っている。

 

麻酔を一本かけるだけでなく、経営、人事、マンパワー、仕事効率化などの責任を持つ管理職って、ほんとどれだけたいへんなんだろう・・・・

勤務医をやめてしまう麻酔科医が多いのは、そういう麻酔以外の点がやってられない、と思ってしまうのが多いのだろうなあ。しかもなぜかこの業界、非常勤(バイト)のほうが一本あたりの料金が破格である。ドクターXで淡々と働いている御意と言っている医師たちが薄給の給料で働かせられ、大門先生が高額料金を報酬としてもらう図式そのまんま。それでもドクターXはドラマとしておもしろくて大好きで毎回視聴している。患者は自分の先生は大門先生みたいな医師であってほしいという願望が視聴率にあらわれているのだなあ、と思ってみている。

 

病院は一般的に、手術すればするほど儲かるので、利益を増やそうとすると手術件数は増えていくし、急性期に関わる手術室、集中治療、緊急手術といった病院の基幹になるところに、麻酔科医はけっこう関わっている。なので、麻酔をできる列数を増やすために、研修医を鵜飼いしたり、看護師麻酔、各科による自科麻酔、無人麻酔、並列麻酔、などせざるを得なくなってくる。

航空業界で例えるなら、一回のフライトに定められている正・副パイロットを、パイロットの数が足りないから、パイロット一人だけでフライトしたり、離陸といった若干危険な段階が終わったら、訓練させたCAさん(=周術期管理看護師)や研修生にそのまま運転をまかせたり、なんなら無人でオートメーションでまかせる、といったようなことか。それで乗客も納得して格安になった航空券を購入しているのなら、それもよしだろう。

 

ただ、何列までなら大丈夫かというと・・・やっぱり4列はやれないかなあ、自分は・・・しかも、大学病院という一番麻酔科医がいる病院でというのが一番の驚きだ。

麻酔科学会が調査するということだが、これが今後、我々の日常業務にどういう影響となるのか・・・